チタンの材質解説
耐食性に優れ、軽くて強い特性を持っています。
純チタンの比重は4.51で、銅の約1/2、ステンレス鋼の約60%です。
耐食性ではステンレス鋼や銅合金に比べ、多くの場合に優れ、特に海中では白金に匹敵する耐食性を示します。
- 【用途】
- 航空、宇宙、火力、原子力、建築・土木、海洋開発、自動車、化学、 石油化学(軽量、高強度、高耐食性)精密機器(非磁性)医療、食品(無毒性・生体適合性) スポーツ用品、家電、その他
純チタンの化学成分
化学成分(%) | |||||
---|---|---|---|---|---|
純チタン | H | O | N | Fe | Ti |
0.015 | 0.02 | 0.05 | 0.25 | 残 |
チタンの物理的性質・他金属との比較
- ・溶融点は1,668℃(鉄よりやや高い)
- ・比重は4.51で軽い(鉄,SUSの約60%、アルミの約1.7倍)
- ・熱膨張係数は8.4×10-6/℃で小さい。(SUS304の約1/2、アルミの1/3)
- ・熱伝導率は0.041cal/cm2/sec/℃/cmで小さい。(SUS304とほぼ同じ)
- ・電気抵抗は55μΩ-cmで大きい。
- ・透磁率は1.0001で非磁性体である。
- ・縦弾性係数は10,850kgf/mm2で小さい。(鉄の1/2、アルミニウムの約1.5倍)
項目 | 純チタン | 鉄 | SUS304 | アルミニウム | 銅 | マグネシウム | ハステロイC |
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原子番号 | 22 | 26 | - | 13 | 29 | 12 | - |
原子量 | 47.90 | 55.85 | - | 26.97 | 63.57 | 24.32 | - |
比重 | 4.51 | 7.9 | 7.9 | 2.7 | 8.9 | 1.7 | 8.9 |
溶融点(℃) | 1,668 | 1,530 | 1,400~1,420 | 660 | 1,083 | 650 | 1,305 |
熱膨張係数 (/℃) | 8.4×10-6 | 12×10-6 | 17×10-6 | 23×10-6 | 17×10-6 | 25×10-6 | 11.3×10-6 |
比熱(cal/gr/℃) | 0.124 | 0.11 | 0.12 | 0.21 | 0.092 | 0.24 | 0.092 |
熱伝導率 (cal/cm2/sec/℃/cm) |
0.041 | 0.15 | 0.039 | 0.49 | 0.92 | 0.38 | 0.03 |
電気比抵抗(μΩ-cm) | 55 | 9.7 | 72 | 2.7 | 1.724 | 4.3 | 130 |
電気伝導率(%対銅比) | 3.1 | 18 | 2.4 | 64 | 100 | 40 | 1.3 |
縦弾性係数(kgf/mm2) | 10,850 | 21,000 | 20,400 | 7,050 | 11,000 | 4,570 | 20,860 |
ポアソン比 | 0.34 | 0.31 | 0.3 | 0.33 | 0.34 | 0.35 | - |
チタンの機械的性質
- 比強度が高い…チタンの比重は鋼,SUSの約60%で比強度(引張り強さ/比重)が高い。
- 耐力/引張り強さの比率が高い…引張強度に対して耐力値が高い。
- 疲労強度が優れている…引張り強さに対し疲労強度が極めて高く、疲労比(疲労強度/引張り強さ)は0.5~0.6を示します
- 衝撃特性が優れる…工業用純チタンは常温より寧ろ低温で靭性を有します。
項目 | 単位 | 温度特性 | |||
---|---|---|---|---|---|
0℃ | 200℃ | 400℃ | |||
引張強さ | MPa | 340~510 | 441 | 245 | 147 |
0.2耐力 | MPa | ≧215 | 304 | 147 | 78 |
伸び | % | ≧23 | 23 | 45 | 40 |
絞り | % | ≧40 | ※極低温(-200℃位)まで急激な脆化現象を示しません) | ||
硬さ | HV | 160 | |||
比強度 | MPa | 75 |
上記数値は代表値であり規格値ではございません。
チタンの耐食性
- ・チタンは、表面の安定な酸化被膜により、優れた耐食性を発揮します。
- ・チタンの耐食性は、溶接、加工、熱処理などによる劣化はありません。
- ・塩酸・硫酸などに対しては、濃度、温度条件によっては腐食されますので注意が必要です。
- ・苛性ソーダなどのアルカリに対しては、極端な高温・高濃度条件を除いて、十分な耐食性を示します。
- ・海水に対する耐食性は、白金に匹敵します。
- ・酸素・水素・窒素ガスには、条件(温度・圧力など)によっては使用上注意が必要です。
チタンの耐薬品性
薬品名 | 組成(%) | 判定 |
---|---|---|
塩酸 | 10 | ○ |
30 | × | |
硫酸 | 10 | △ |
50 | × | |
硝酸 | 10 | ◎ |
50 | ◎ | |
燐酸 | 10(通気) | ○ |
50(通気) | △ | |
塩化第二鉄 | 10 | ◎ |
30 | ◎ | |
塩化第二銅 | 10 | ○ |
30 | ○ | |
塩化ナトリウム | 10 | ◎ |
40 | ◎ | |
塩化カルシウム | 10 | ◎ |
50 | ◎ | |
塩化アンモニウム | 10 | ◎ |
40 | ◎ |
薬品名 | 組成(%) | 判定 |
---|---|---|
アンモニア | 10 | ◎ |
30 | ◎ | |
苛性ソーダ | 10 | ◎ |
50 | ◎ | |
硫化水素 | 乾燥ガス | ◎ |
湿潤ガス | ◎ | |
塩素 | 乾燥ガス | × |
湿潤ガス | ◎ | |
海水 | 高流速 | ◎ |
酢酸 | 10 | ◎ |
60 | ◎ | |
蟻酸 | 10 | ○ |
50 | ○ | |
クエン酸 | 10 | ◎ |
50 | ◎ |
記号の説明 ◎:<0.127 ○:0.127~0.508 △:0.508~1.27 ×:>0.27mm/年
試験温度は全て常温(24℃)です
※使用に際しては使用条件にて差異が生じますので必ずテストをお願いします
※上記数値は代表値であり規格値ではございません