ねじ・ボルトの強度区分について
強度区分はねじの強度を示す指標で、JIS規格で定められています。
誤った強度のねじを使用して、事故が起こらないようにするためにも、正しい強度のねじを採用しましょう。
今回は、ねじの強度区分を解説します。
ねじ・ボルトの強度区分について
ねじの強度区分は、ねじの強度を示すものです。使用する用途や目的により求められる強度が異なります。
なお、強度区分はねじに使用している鋼材の種類や製造法、熱処理の方法などによっても左右されるものです。
ここでは、鉄製ねじの強度区分とステンレスねじの強度区分に関して、それぞれの数値を紹介します。
ねじ・ボルトの強度区分について

鉄製ねじの強度区分は、ねじの頭に記載されている材質や強度を示す数値で確認できます。「3.6」「4.6」「4.8」「5.6」「5.8」「6.8」「8.8」「9.8」「10.9」「12.9」の10段階で分かれています。
記載されている数値のうち、始めの数値は引張強さと材質を示し、次の数値は引張強さに対する荷重につき、何パーセントが降伏点にあたるかを示すものです。
引張強さとは
引張強さとは、材料を破壊するまでの最大荷重(N)を断面積(mm²)で割った値を指します。
図の「8.8」ボルトの場合、800(N/mm²)の引張強さを持つことになります。
降伏点とは
材料に荷重をかけていったとき、伸びきった状態で元に戻らなくなる点のことを降伏点と呼びます。
図の「8.8」ボルトの場合、引張強さに対して80%の荷重がかかると伸びきったままになります。よって、640(N/mm²)未満の荷重調整が必要です。
鉄製ねじの代表的な強度区分は、以下のとおりです。
強度区分 | 詳細 | 製品 | 対応ナット強度区分 |
---|---|---|---|
4.8 | 400N/mm²の引張強さのうち、 80%の320N/mm²以上の荷重がかかると伸び切り、元に戻らない。 |
一般ボルト 一般小ねじ |
4(4T) |
8.8 | 800N/mm²の引張強さのうち、 80%の640N/mm²以上の荷重がかかると伸び切り、元に戻らない。 |
高強度ボルト | 8(8T) |
10.9 | 1000N/mm²の引張強さのうち、 90%の900N/mm²以上の荷重がかかると伸び切り、元に戻らない。 |
高強度ボルト | 10(10T) |
12.9 | 1200N/mm²の引張強さのうち、 90%の1080N/mm²以上の荷重がかかると伸び切り、元に戻らない。 |
高強度ボルト 六角穴付きボルト |
12(12T) |
ステンレス製ねじの強度区分

ステンレスねじの強度区分は、ハイフンの前で鋼種区分を、ハイフンの後で強度区分を示します。A5-80の場合、以下のとおりです。
- ・A5:鋼種区分(オーステナイト系)
- ・80:強度区分
具体的なステンレスねじの鋼種区分および強度区分は、以下のとおりです。
鋼種区分 | 鋼種分類 | 代表的な鋼種名 |
---|---|---|
A1 | オーステナイト系 | SUS303 |
A2 | SUS304、SUS304L、SUSXM7 | |
A3 | SUS321、SUS347 | |
A4 | SUS316、SUS316L | |
A5 | SUS316N、SUS316LN | |
C1 | マルテンサイト系 | SUS403、SUS410 |
C3 | SUS431 | |
C4 | SUS416 | |
F1 | フェライト系 | SUS430 |
以下、ステンレス製ねじの強度区分を、オーステナイト系とマルテンサイト系、フェライト系に分けて紹介します。
【オーステナイト系】
鋼種分類 | 鋼種区分 | 強度区分 (加工法) |
引張強さ Rm 最小MPa |
永久伸び 0.2%耐力 Rpo.2 最小MPa |
破断後の伸び A 最小㎜ |
---|---|---|---|---|---|
オーステナイト系 | A1 A2 A3 A4 A5 |
50(軟質) 70(冷間加工) 80(高強度) |
500 700 800 |
210 450 600 |
0.6d 0.4d 0.3d |
【マルテンサイト系、フェライト系】
鋼種分類 | 鋼種区分 | 強度区分 (加工法) |
引張強さ Rm 最小MPa |
永久伸び 0.2%耐力 Rpo.2 最小MPa |
破断後の伸び A 最小㎜ |
硬さ HBW |
硬さ HRC |
硬さ HV |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
マルテンサイト系 | C1 | 50(軟質) 70(焼き入れ・焼き戻し) 110(焼き入れ・焼き戻し) |
500 700 1100 |
210 410 820 |
0.2d 0.2d 0.2d |
147-209 209-314 – |
– 16-34 36-45 |
155-220 220-330 350-440 |
マルテンサイト系 | C3 | 80(焼き入れ・焼き戻し) | 800 | 640 | 0.2d | 228-323 | 21-35 | 240-340 |
マルテンサイト系 | C4 | 50(軟質) 70(焼き入れ・焼き戻し) |
500 700 |
250 410 |
0.2d 0.2d |
147-209 209-314 |
– 16-34 |
155-220 220-330 |
フェライト系 | F1 | 45(軟質) 60(冷間加工) |
450 600 |
250 410 |
0.2d 0.2d |
128-209 171-271 |
– – |
135-220 180-285 |
用途に応じた強度区分のねじを使おう
ねじの強度を示す指標である強度区分は、JIS規格です。用途に合わないねじを使用すると事故が発生する可能性があります。また、ねじに求められる強度は用途によって大きく異なるため、注意しましょう。
鉄製ねじの強度は引張強さと降伏点で示すもの、ステンレス系ねじは鋼種区分と強度区分で示すものです。
適切な強度のねじを選ぶためには、正しいねじの強度区分の見方を覚えておくことが大切です。加えて、用途ごとに適切なねじの強度を押さえておきましょう。使用するねじを購入する際は、事前にJISで規定されたねじの強度区分を確認しておくことをおすすめします。
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