イリサート®は母材自体の強度ではネジ穴を保持できない材料に強いネジ穴を作るインサート※1製品です。
プラスチック・軽金属・鉄板などに使用することができます。
自動車部品、輸送機器、宇宙産業、医療機器、電子機器、楽器、遊具など様々な産業で採用されています。
※1…インサートとは、樹脂や軽金属などの軟らかい素材のネジ穴に挿入し、メネジやボルトを補強する部品の総称。
イリサート®は有限会社廣杉精機の登録商標です。

イリサート®の使用シーン
- ネジ穴(タップ穴)を母材に直接切っても締め付け強度を保持できない場合のメネジの強化
- ネジ穴不良時の補修
- 締め付けトルクオーバーなどで破損したネジ穴の修繕
従来製品(ねじ込み式インサート)の問題点を解決したイリサート®
1, タングレスで挿入トラブルの心配なし
従来のコイル型のねじ込み式インサート製品では、挿入時に必要な引っ掛け部位(タング)を切除する必要がありました。その際にスプリングを変形させてしまう事があり、挿入不良などのトラブルの原因となっていました。
イリサート®は専用工具で挿入を行うためタングを必要とせず、タング切除を起因とするトラブルを避けることができます。
2, 切削加工品なので挿入時の変形が起きにくく、高精度なネジ山を保持
イリサート®は棒鋼から削り出した切削加工品です。部品全体の形状変化が起きにくい構造をしており、高精度のネジ山を保持しています。
従来のコイル型のインサート製品は、スプリング上の構造のため挿入時の変形によるネジピッチの崩れ(ピッチ飛び)が生じる場合がありました。ピッチ飛びは実用時にボルトの挿入ができなくなるトラブルの原因となります。
イリサート®は一体物の構造のため、変形によるピッチ飛びが発生しにくく、信頼性の高いネジ穴を作ることが可能です。
3, 接着剤の使用が可能
イリサート®は母材へ挿入する際に接着を使用することが可能です。
従来のコイル型の製品の場合はその構造上、鋼線の隙間から内部に滲み出てしまうため接着剤を使用することができませんでした。
イリサート®は一体物の製品のため、接着剤が内部に入り込む心配がなく、強固なネジ穴を作ることが可能です。
イリサート®とコイル型インサートとの違い
ねじ込み式インサートは、イリサート®の他にコイル形状のインサートが流通しています。
イリサート | コイル型インサート | |
---|---|---|
外観 | ![]() |
![]() |
材料 | 棒鋼 | ワイヤー |
構造 | 一体物 | コイル(バネ形状) |
タップ | 市販タップ | 専用タップ |
挿入時の方向性 | 有 | |
挿入治具 | 専用 | |
タング | 無 タング折り取り作業が不要 |
有 挿入後に工具の引っ掛け部(タング)の折り取りが必要 コイル型インサートにはタングのない(タングレス)製品もあります。 |
ピッチ飛び | 無 | 挿入時にバネが伸びてしまい ねじピッチの崩れ(ピッチ飛び)が生じやすい ピッチ飛びが生じるとねじ・ボルトの挿入が出来なくなる |
形状変化 | 無 | ねじ・ボルトの脱着を繰り返すと 口元部へバネが伸びて飛び出しやすい |
挿入タイム | 4~5秒 | 約20秒 |
接着剤 | 可 イリサートは一体物のため内側に滲むことがない |
不可 コイル型は接着剤が内側に滲んでしまうため使用できない |
ラインナップ
1分動画で見る イリサート®の使い方
1イリサート®を挿入する箇所にドリルで下穴を開け、イリサートの外径雄ねじサイズに合わせタップ加工(ねじ山加工)します。
【下穴径の目安】
イリサート仕様 | 下穴加工 | ||||
---|---|---|---|---|---|
呼径 | ピッチ | 外径雄ねじ | 下穴 | 公差 | タップ |
M1.4 | 0.3 | M2.6×P0.45 | φ2.1 | ±0.03 | M2.6×P0.45 |
M1.6 | 0.35 | M2.6×P0.45 | φ2.2 | ±0.03 | M2.6×P0.45 |
M1.7 | 0.35 | M3×P0.5 | φ2.5 | ±0.04 | M3×P0.5 |
M2 | 0.4 | M3×P0.5 | φ2.5 | ±0.04 | M3×P0.5 |
M2.5 | 0.45 | M4×P0.5 | φ3.5 | ±0.04 | M4×P0.5 |
M2.6 | 0.45 | M4×P0.5 | φ3.5 | ±0.04 | M4×P0.5 |
M3 | 0.5 | M4×P0.5 | φ3.5 | ±0.04 | M4×P0.5 |
M4 | 0.7 | M5×P0.5 | φ4.5 | ±0.04 | M5×P0.5 |
M5 | 0.8 | M6×P0.5 | φ5.5 | ±0.04 | M6×P0.5 |
M6 | 1.0 | M8×P0.75 | φ7.3 | ±0.04 | M8×P0.75 |
M8 | 1.25 | M10×P10 | φ9.0 | ±0.04 | M10×P1.0 |
M10 | 1.5 | M12×P10 | φ11.0 | ±0.04 | M12×P1.0 |
※イリサート挿入口になる部分にはC0.2 - C0.5の面取りが必要です。
※下穴の全長は使用されるイリサートの有効長を十分にとってください。
※イリサートの外径雄ねじは、ねじピッチが細目になります。タップ加工時は市販の細目ハンドタップやスパイラルタップ等をご使用ください。
(呼径M2以下は並目となります)
2別売の専用工具を使い、加工した穴にイリサートをねじ込みます。
【すり割なしタイプ(IRU-0000シリーズ)の場合】
使用工具イリサート専用 挿入ドライバー(IR-00シリーズ)
使用方法
1工具の先端にイリサート本体を取り付ける

2工具のロック部を左へ回し、イリサート本体を固定する

3グリップ部分を持ち相手部材(ワーク)へ締め付ける

4グリップ部分を固定したままロック部を右に回し、イリサート本体のロックを解除する

5グリップを左に回して工具を取り外す
【すり割付きタイプ(IRU-0000Sシリーズ)の場合】
使用工具イリサート(すり割付き)専用挿入ドライバー(IR-00Sシリーズ)
使用方法
1工具の先端をイリサート本体のすり割り部分に差し込み、相手部材へ締め付ける
2工具を引き抜き取り外す
取り扱い時の注意
- 緩み止めを使用する場合には、イリサート®本体を脱脂後、又は表面処理後にご使用ください。
また、内側ねじ部には絶対に付着させないでください。締結後ねじが接着されて抜けなくなります。 - アルミ部材へ使用する場合、イリサート®挿入後のアルマイト加工はできません。
- イリサート®をご使用の際は必ずテストを行ってから採用を決定してください。
イリサート®は、有限会社廣杉精機の登録商標です。
>>特集一覧はこちら